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No.31 再び、子育ては「闘い」?

No.31 再び、子育ては「闘い」?

連載が30回になったので、No.1のコラムを読み返してみました。子育て以前に、結婚するのも大変だし、出産もハードルが高い。どんな人も、顔色をうかがいあってゆとりをなくしているのでは…と書きました。それから1年。私と3歳の娘も、模索中です。

 

リアルに起きているのは、子どもの病気と仕事の問題。7月に入り、「今年は夏かぜがなくて順調だな」と思っていたら、娘が発熱。少し前の遅刻について、職場で問題にされたばかりでした。娘の通院や病児保育のため遅れる日は必ず連絡しますが、よく伝わっていないのですね。育休から復帰して保育園に入ったときは病気がもっと多く、やむを得ず私が休むと注意されまして。社内のママに相談し、「遅刻してでも行ったほうがいいのでは」とアドバイスを受けていました。次々と問題が飛んできて、心身に大打撃です。

 

ママは看病で寝不足の中、何件も連絡を入れ、病気の子を預けて出勤できた。迷惑はかけていない。そう思っていても、受け止め方は違うんですね。きっちり時間で決めて、できていないと言われたら、何も言えません。これまでの職場で子育て中に休む同僚を見てきたし、私もカバーして、それが当たり前と思っていましたが。

 

テレビで「37.5℃の涙」というドラマが始まったそうです。たまたま、原作のコミックを読んでいました。子どもの熱が37度5分あると保育園に行けない、という現実が盛り込まれています。お迎えや看病で仕事ができずに立場が悪くなるのは、ママ。対等な共働きだと思っていたのに、夫は無関心。そういう例が少なくないのですね。

 

保育園から「熱が出た」と電話があれば、すぐお迎えに行かなければなりません。さらに子どもの病気は何日か続きます。熱があれば保育園に行けません。親が気分で休ませるわけでもなく、権利を主張するわけでもなく、やむを得ないのです。保育園で手足口病などが流行している中、気をつけてもかかってしまう。娘と密着するママも、うつります。すでに子どもの病気で休まないよう言われているので、自分がうつっても休めませんでした。

 

最近、1~2歳のころ病児保育によく預けていたときのことを思い返します。「何を言われても、私が休んで、いてあげたらよかったかなあ」と。初めての病気で、どうしていいかわからなくて、でも預けて会社に行かなくちゃと思っていたのです。朝、「行かないで」と泣く高熱の娘。初めて会うシッターが多く、夜になると「ママがよかった」と言われ、抱き合って泣きました。

 

あるとき自宅に来た病児保育のシッターが目を離し、娘がけがをしてしまいました。会費が高かったので、けがをきっかけに退会して別の団体に入会。費用はかかりますし、時間の制約があり、病児保育も万能ではありません。

 

出産をきっかけに、異動したり、責任ある仕事をもらえなくなったりという話も聞きます。私も、長く続けていた職種から離れざるを得ませんでした。現在は、「とにかく欠勤しないで下さい」という職場。前は、自分で融通をつけて成果を形にする仕事をしていたので、新しいルールにとまどいました。

 

アラフォーでママになると、仕事も長く積み重ねてきている。だけど出産をきっかけに、リセットされてしまう。新たな分野で結果を求められても、残業できないし、子どもは病気をする。私の経験はどこへ行っちゃったの?と思います。さらなるダメ出しをされ、絶望的な気分に。「仕事が不十分」「中途半端」と言われると、自信をなくしてしまいます。

 

慣れた業務を続けられたら、自分が打ち砕かれるような思いはしなくてよかったのか…。少なくともこれまでの経験を尊重してもらえれば、違うかもしれない。子育てのアクシデントがあっても、一線の仕事を続けているママはいます。「下の子が病気がちで急に休むことが多いけど、周りの理解がある」「小さいときはほとんど仕事にならなかったけど、成果は出してきた」というママは、恵まれている一部の人なのかな。

 

身内がかけつけてくれるか、夫が都合をつけてくれるのか。サポートがあるかどうかも大きいです。娘は病気、ママも具合が悪い、出勤しなくちゃいけない。重なったときは、本当に孤独。だれかの手があれば…という切実な思いです。

 

では融通がきかなくて、サポートがなかったら、仕事をやめるしかないのでしょうか。いまから子連れで転職できるのかなとか、やめて収入がゼロになってやりくりできるのかなとか。何かを変えようと思っても、そういうところから心配になる。

 

仕事をやめたママにも何人か話を聞きました。財力、フリーで稼げる仕事、実家の援助。何かしらある人は決心できたみたい。私も「そんなに大変ならやめたら?」って言われます。収入や保育園のことを考えると、すぐに「自分らしく生きたいから、やめる」とはいかないのが現実。こうしたら解決、という答えがまだ見つかりません。頼れる人がいない。どうしていいかわからない。胸がざわざわとして、締め付けられる瞬間があります。

 

他の人の考えを、急に変えることはできません。繰り返しになりますが、空気を変えるところから、でしょうか…。子育て中でも、そうでなくても、ちょっと力を抜ける時間がありますように。自然と笑顔になれる日がありますように。

 

(なかの・かおり 39歳で初産。会社員生活は、20年目になりました)