NPO法人 【仕事と子育て】 カウンセリングセンター

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No.22 パパトーク・チョコレート店経営・Kさん(45)

東京都内のチョコレート専門店を経営するKさん。宣伝も大量生産もしません。丁寧に作られたチョコレートと、季節ごとのラッピングにファンが多いお店です。Kさんは、大学でスピードスケートの選手でした。会社員を経て父上の会社を継ぎ、スイスでお菓子作りを学んでいます。ふたりのお嬢さんは中学生と小学生。経営者としてパパとして、お話を聞きました(ご本人の申し出により、イニシャルとさせていただきました)。
 
―どのように子育てにかかわってきましたか。
「いつも妻の下請け、という気持ちです。私は朝7時ごろに家を出て、帰宅も遅い。忙しいとは言いたくありませんが、朝晩しか会えないので」
「できることはやります。新生児のころの沐浴(もくよく)は、ふたりともパパがやりました。小さいときは、金曜か土曜の夜は、パパが子どもたちと寝る日でした。夜ごはんが終わると、ママは別室に行って休みます。新生児のころは、数時間おきにミルクを飲ませましたよ。ふたりがかわるがわるほぎゃーというので、ほとんど寝られませんでした。ママが起きてきたら、交代して朝寝し、補いました」
 
―ぐっすり寝てくれない、夜泣きするというのは多くの親が悩むことですね。
「帰宅すると、ふたりのどちらかが泣いている時期がありました。ママもどうにもならず、疲れていてぎりぎりだと伝わってくる。そういうときは、夜8時ぐらいでも、ふたりをつれて散歩に行きました。コンビニで、肉まんを1個買って3人で食べようかって。そうすると少し落ち着く。寝てしまって抱っこで帰ったこともあります」
「お姉ちゃんは夜中に泣くことが多くて、パパのおなかにのせて寝ていましたよ。ふたりとも夜泣きが続いたので、夫婦でとぎれとぎれに仮眠してつなぎました。パパ友達の家に遊びに行って犬と走り回ったり、バーベキューで友達と遊んだりすると、よく寝ました。遊び疲れて寝てくれるように心をくだきましたが、これという手はなかったですね」
 
―ふたり育てると、どれだけ大変なのでしょうか。
「無責任なパパ、として言うと、1たす1は2ではなくて、1.3ぐらいかな。初めての子育てだと、神経質になってしまうでしょう? ふたり目だと構えなくなるというか、子どもたちも気にしなくなるんです。たとえば、お姉ちゃんが泣いていても平気で寝るようになる。そういう妹を見ていて、上の子もだんだん寝られるようになるとか」
 
「下の子が生まれると、赤ちゃん返りすることもあります。父から『下の子を抱っこする前にまず上の子を抱っこしなさい。上の子にも気持ちがあるし、記憶に残るから』とアドバイスされました。意識して、下の子をバギーにのせて、お姉ちゃんを抱っこしました」
 
―子育て中のパパへ、メッセージをお願いします。
「大人になると、ちゃんと向き合えなくなるから、小さいうちに後悔のないように向き合ったほうがいいですよ。幼稚園からいままで、朝は一緒に家を出て、送っていっています。朝の30分間の積み重ねが、大きい。部活のこととか、テストや友達のこととか、たわいのない話をします。友達の輪に入れないと言われたら、『ラインやメールでなく、リアルに話さないとわからないよ、放課後に遊んできなさい』とアドバイスしました」
「見守っているだけですが、話を聞いて、状況を知っているということが大事だと思います。そんな努力が、少しずつ花を咲かせてきたようです。娘からはメールやラインで、いつ話せる?と聞かれて、相談されます。項目によりますが、85%はママ。3%はパパ(笑)、あとは妹に相談するようです」
 
―従業員にはママさんもいるそうですね。
「社員とアルバイトを含めて、50人ほどの会社です。4人の店舗スタッフのうち、ひとりが育休中です。社には最長3年の育休の制度があります。頑張ればふたりでできる仕事だとしても、病気やけが、妊娠ということを考えると、3人いたら大丈夫という体制。有給休暇も、遠慮して取れない人もいるので、100%取得しないと昇給させませんよ、と言っています」
 
―多くの職場で、ママが働きにくい雰囲気があります。
「バブル崩壊後、どの会社も、特に中小企業は人員がギリギリでしょう。残念ですが、妊娠中や子育て中のママがいたら回らないという現実はあると思います。会社の利益を上げなければならないですし、戻ってきてくれるかわからない人を雇用し続けるのは苦しいという事情も、経営者としてはわかります」
「苦しくない会社になるためには、ちょうどいい人員配置が必要です。私たちの場合、『季節労働』なので、繁忙期に臨時で手伝ってくれるスタッフがたくさんいるんです。子育てで退職しても、数日間のアルバイトで帰ってきてくれるし、子どもが大きくなったら社員に戻ってくれるかもしれない。連休をとるときは、仕事が落ち着いている時期に重ならないように調整してもらう。そういうお願いができる人間関係も大事だと思います」
 
★お会いして★
これぐらいかかわってくれるパパだったら、ママはどれだけ助かるでしょう。ある取材で初めて伺ったとき、お互いに30代でした。お店に立ち寄ると、カフェコーナーが人生相談室に変身。仕事や子育てのアドバイスをもらいます。自ら現場で働き、困っている人に優しい。オシャレな街の熱きパパ社長は、学校の行事や経営の勉強会などスケジュールがびっしりだそうです。
(なかの・かおり 39歳で初産。約20年、メディアの仕事にかかわっています)