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NO.10 ママトーク・細川貂々(てんてん)さん
NO.10 ママトーク・細川貂々(てんてん)さん
NO.10 ママトーク・細川貂々(てんてん)さん

NO.10 ママトーク・細川貂々(てんてん)さん

 

だんなさんのうつをめぐる体験を描いたまんが家・細川貂々さん(45)。コミックエッセイ「ツレがうつになりまして。」は共感を呼び、映画やテレビドラマにもなりました。てんてんさんは38歳のときに男の子を出産、子育てに奮闘する本も出版しています。ご夫妻とはうつの取材などで何度かお会いしました。自宅におじゃましたとき赤ちゃんだった「ちーとくん」も小学生。てんてんさん親子に再会し、その後の一家について聞きました。

 

―妊娠は思いがけなかったのですね。

「結婚して13年目の出産でした。ツレ(望月昭さん)のうつが治り、ふたりでランニングをしていたら妊娠。運動がよかったのかもしれないです。つわりはあって、産まれるまで気持ち悪さが続きました。食べられるものも限られていて。柿の種やおにぎり、ロールキャベツ、マヨネーズであえたものは大丈夫でした。ツレが食べられるものを研究してくれて、トマトをそうめんにのせてめんつゆをかけたものがおいしかったです」

「グレープフルーツのアロマオイルの香りをかぐと気持ち悪さがおさまったので、ハンカチにしみこませ、夜はオイルをたいて寝ました。昼間はなんとか起き上がって仕事したのですが、ツレが掃除や洗濯、ごみ捨て、買い物をしてくれて助かりました」

 

 

―出産はいかがでしたか。

「逆子だったので、帝王切開でした。大学病院は早めにスケジュールを決めなければならなくて、9カ月のときには出産の日が決まりました。高齢初産でリスクもあったので、帝王切開でよかったと思います。10日間、入院しました。1日目は動けなくて、2日目に起き上がって歩く練習をしました。少しずつおっぱいをあげたり、お世話をするようになりました」

 

 

―仕事との両立は。

「双方の親も高齢で、全面的な手助けはのぞめませんでした。初めは赤ちゃんの世話で眠れなくなるし、うつが再発したらどうしようと心配だったのですが、ツレは子育てに向いている人だったのです。退院してまもなく粉ミルクを飲んでいたので、夜の間はツレがミルクをあげて、昼は私、と交代していました。疲れ切ってふたりとも起き上がれないこともありましたが…」

「産む前にスケジュールが入っていて、産後2カ月ぐらいで仕事を再開しました。私が仕事をして、ツレは経理を担当し主に育児をしているので、息子にとってはパパがママですね。息子が初めにしゃべった言葉はパパ!でした。1歳半ぐらいになって、ツレが子育てに煮詰まってしまい、保育園の一時預かりを利用してみました。週に1回、半日だけでしたが、初めは息子もすごく泣いて、ツレも心配して…。でも1カ月したら慣れましたね。2~3歳は、9時から5時まで週3日、保育園に通いました。預けている間に、ツレは図書館に行ったり、買い物したり、用事をすませていました。息子はそれまでほとんど病気をしなかったのですが、保育園で病気をもらってくるようになりました。家族みんなでおたふくかぜにかかったときは、おばあちゃん(ツレのお母さん)がごはんを持って来て、みてくれました」

 

―パパの子育てはいかがですか。

「息子が1歳のとき、ツレが『もっと子育てに参加してよ』と爆発したことがありました。私はどんどん仕事を引き受けてしまい、部屋にこもっていたころ。私がみているから、パパは出かけてきてねと言ったのですが、息子はパパー!って号泣して…。仕事をつめすぎて反省しました。イヤイヤ期のときも、パパの後追いをしていました。離乳食を考えて食べさせたのもパパ。最近も食が細い息子のために工夫してくれます」

「ママどうしだと声もかけやすいし、サークルもありますよね。ツレは、地元でパパの会を探して入り、交流していました。煮詰まりそうになると一時保育を利用したり、月末の経理が忙しいときはおばあちゃんに来てもらったり。そういうところは賢いと思います

 

 

―思い切って引っ越しましたね。

「ずっと千葉に住んでいて、息子をかわいがってくれる行きつけのお店もあるのですが。幼稚園に入るタイミングに、ツレが住んでいたことがある関西、しかも私が大好きな宝塚に引っ越しました。息子を通して、知り合いができました。幼稚園のお誕生会に行ったとき、となりにタカラヅカファンのママがいて、仲良くなりました。会うのは劇場の中(笑)。同じマンションのおじさんにも声をかけられて、ツレは気さくなので溶け込んでいますよ

 

 

―ちーとくん、小学生になりました。

「同じマンションの子どもたちと、集団登校しています。英語や積み木の教室にも通い、妖怪ウォッチやトッキュウジャーに夢中ですよ。あと鉄道が大好き。1歳半ぐらいから東西線の車両が通るのを見て喜んだり、鉄道の本を食い入るように見たり。2歳のとき、『ツレがうつになりまして。』の映画にエキストラ参加したのですが、前橋に行くのに初めて新幹線に乗りました。3歳からはいろいろな路線を乗り継いで大阪から東京まで行って。駅や路線の名前も覚えちゃう。時々、ついていけなくなります」

 

―これからのてんてんさんとツレさんはどうなりますか。

「息子は5歳ぐらいから、もうぼくのことは描かないでって言っています。3歳ぐらいまでのことを描いたシリーズはおもしろいと言って読んでいました。親としては、子育てのことって成長とともにすぐ忘れてしまうので、本にして残せてよかったですね。息子がひとりでいろいろできるようになって寂しさもありますが、子育て以外の時間が増えて、それぞれ自分を見つめ直す機会ができました。幼稚園は2時半まででしたが、小学校は3時半まで。生活もぐっと楽になりました。ツレが仕事をするなら、私が状況に応じて家事や育児をやりますし。模索しているところです

 

 

☆お会いして☆

ダイエットエッセイも出版し、きゅっと引き締まったてんてんさん。私が妊娠したときは「高年齢だと体力が大変だけど、がんばって」とお手紙をいただきました。「子どもが小さいころの大変さって忘れちゃうから、まんがやコラムにしておくのはいいかも。渦中にあるママがいたら励ましてあげたい」と一致。子育て、家事とてんてんさんを支えるツレさんも、ママたちと同じ悩みを乗り越えてきたのですね。パパ主導の子育て、勉強になりました。

 

(なかの・かおり 39歳で出産。約20年、メディアの仕事にかかわっています)