NPO仕事と子育てカウンセリングセンター
活動レポート活動レポート:シンポジウム
第1回【仕事と子育て】カウンセリングシンポジウム

企業が【仕事と子育て】カウンセリングを取り入れる意義

渥美由喜 (株式会社富士通総研 経済研究所 主任研究員)

ワークライフバランスで「ワーク」も「ライフ」もイキイキと


基本的にワークライフバランスのというのは「イキイキ社員」を増やすことだと思っています。高度成長期に日本社会を支えたのは、企業戦士と言われた人々、典型的バリバリ社員の皆さんでした。WLBなぞ無縁の彼らは、ワークに特化して、専業主婦である妻がライフを全面担当して、その間でバランスを取っていたわけです。最近、熟年離婚が増加しているのをみると、必ずしもうまくバランスをとれていたカップルばかりではありませんが、将来も右肩上がりで大きく経済成長し続けられると夢想できた社会では、二人三脚で進む意義もありました。ところが時代は変わり、いまはこの「バリバリ社員」はやっかいな存在となりつつある、と渥美さんは看破します。それは最近、この人たちは「偽装バリバリ社員」と「過労バリバリ社員」に二極化して、それぞれに問題を抱えているからなのです。「偽装バリバリ社員」とは日中ダラダラ仕事をしながら、ぐずぐずと遅くまで居残って、あたかも残業までして仕事してます!というアピールばかりに熱心な人々。こうした社員のとばっちりを受けるのが、だてに優秀なために仕事をどんどん任せられ、気がつけば同僚の何倍も働いて過労死・過労鬱寸前にまで追い込まれる「過労バリバリ社員」です。

私はコンサルをする際に、「偽装バリバリを撲滅して、過労バリバリの負荷軽減を図りましょう」ということを言うと、時短という言葉を使わなくても経営者は耳を傾けてくださいます。
一方でワークライフバランスを進めると、制度にあぐらをかいてヌクヌクしてしまうと思いこんでいる経営者もいます。その時に、時間当たりの生産性をとってみると、時間制約のある人ほど時間当たりの生産性は極めて高いです。ダラダラ働いて長時間労働している偽装バリバリは目ではないです。私は『ヌクヌク』が実は『イキイキ』で、『バリバリ』が本当に『イキイキ』しないと会社の将来はないとアドバイスするようにしています。

ちなみに女性が働きやすいと自負している企業には3段階―第一ステージ、第二ステージ、第三ステージあります。

第一ステージは、性別役割分業の中で女性の役割が限定され、女性がたくさん働いて長く勤めている企業です。「うちはたくさん長く働いている女性がたくさんいます」と言うのですが、女性にはあまり期待しないという雰囲気があるので、もともと入社時には優秀だった人たちがどんどんやる気を失ってしまい、結果的に『ヌクヌク』に追い込んでしまっていたりします。とても勿体ないことです。

第二ステージは、『バリバリ』働けば、評価をするという会社です。こういう企業では、女性は男性以上に『バリバリ』働かないと評価されません。これだと、ワーキングマザーなど時間制約のある人には、決して働きやすくはないのです。

特に第三ステージに移行する上では男性との連携が重要です。生活軸を持ちたい人が若い男性でも増えています。そのような人と女性が手を結んで、時間当たりの生産性を評価する。メリハリをつけて働いて、きちんとやることはやっている人はちゃんと評価してもらうというようにしないとなかなか女性の働きやすい環境にはならないと私は思っています。


企業に出向いて、役職研修をさせていただいています。いくつか、ケースを紹介します。

≪カウンセリングケース1 偽装バリバリ≫
偽装バリバリには、『自覚偽装』と『空気が読めない偽装(KY偽装)』があります。『自覚偽装』とは、自分がサボっていることがわかっている人です。『KY偽装』は忙しい忙しいといって、業務後に次世代育成支援として、次の世代の社員に自分のノウハウ-自分の過去の武勇伝-を部下を呼んで聞かせていたのです。1回聞く分にはとても面白いお話なのですが、部下にとってはストレス以外の何物でもありませんでした。当人が重要だと思っているほどには、あまり重要ではなかった。また、話自体は面白いので、部内にとどめずに、社内に広く知らしめれば、生きてくるということで、その会社では、部長さんの社内のSNSサービスに武勇伝を連載していだく方法をとりました。部長さんには帰宅して執筆をしていただくようにした結果、その部の業務効率は格段に向上しました。

≪カウンセリングケース2 過労バリバリ≫
前述の粘土層には『カミ粘土』と『カタ粘土』がいると思います。紙粘土は溶けます。腑に落ちない方には、是非、お嬢さんがおられたら、じっくりと話を聞いてみて下さいと言います。特に、ワーキングマザーのお嬢さんからいまの共働きの子育てがどれほどたいへんか、という深刻な話を聞くと一気に溶けたりします。
一方、カタ粘土は溶けないので、どうしたらプチチェンジのきっかけを作れるか、考えます。「エース部長の下で業績はすこぶる良いが、部下のストレスが極めて高いので何とかしてほしい」という会社に出向きました。それは何故かと言うと、仕事に打ち込んで死ねたらそれで本望だ。
武士道は死ぬこととみつけたりとおっしゃっていました。講演させていいただいて、部課長はおっしゃりたいことがたくさんあるので必ず聞くようにしています。よくよく聞いたらこの部長さんは「太陽にほえろ!」のGパン刑事のファンだったことがわかりました。滅びの美学です。滅びの美学は本人が御隠れになるのであれば良いのですが、家族を巻き込み部下を巻き込むのは問題であろうと思います。この部長さんがすごく心酔している会長さんが「○君、君はわが社に本当に必要な人材だ。定年延長をして持続可能な働き方に切り替えてほしい。是非、君には長く働いてほしいから早く帰ってほしい」と言ったら、会長がそこまで私の健康を心配してくださったと言って早く帰るようになったという話があります。