第1回【仕事と子育て】カウンセリングシンポジウム
基調講演「これから変わる【仕事と子育て】両立支援」
坂東眞理子 (NPO法人【仕事と子育て】カウンセリングセンター理事長)
これからの日本の女性はどう働くか
日本ではこれからどうすれば良いのか、どのような対策がとられているのだろうか。 1975年の国際婦人年、1985年の男女雇用機会均等法が制定、その頃から育児休業法、つまり女性が仕事と子育てを両立していく上で大事な制度を是非作りましょう、と政府内の女性たちも声を大にして言っていました。が、経営者側はそのようなことをされたら雇用管理が出来ないということで、育児休業は絶対に反対という姿勢でした。しかし、1.57ショックのお陰で1991年『育児休業法(現『育児・介護休業法』)』が制定されました。このときは、育児のために1年間休むことは、父母どちらでも取得出来るが、その間は無給という法律でした。1995年にそれが改正されて25%の所得保障、2001年からは40%の所得保障。昨年2007年からは50%になるというようにどんどんと育児休業制度は強化されてきました。
これは少子化がこのままいったら日本の経済は立ち行かなくなるからです。まず労働力の不足、将来の購買力も不足してくる。経済面でもこのままではやっていかれないということが経営者の方たちにも目に見える形になってきたため、「このままでは大変だ」と仕事と子育ての両立が出来るような対策を充実しようということになったのです。 エンゼルプラン・新エンゼルプランというように保育もどんどんと充実してきました。そして育児休業制度も出来ました。女性を管理職にしようという法はあまり目立った進歩を見せていませんが、仕事と子育ての両立、働いている女性が子どもを産みやすいような環境を作ろうという活動は、この10年の間に確実に進んできました。これは、たまたま少子化の影響がインパクトになったとも言えますが、育児休業制度が充実し、さらに、低年齢層の育児が待機児童ゼロ作戦とか少子化対策プラスワンと色々な形で上乗せさせられて充実してきています。
育児休業制度が充実してきた現在、25歳から35歳のM字型の谷と同時にその期間をどのように過ごすかというのは一生のキャリアを考える上でとても大事です。男性でも成功した人たちは25歳から35歳の間に実力を蓄えています。また良いメンター(仕事やキャリアでの良いお手本であり、支援者)との出会いがあるのです。良い資格を取ったというような色々な経験に恵まれています。そうではない人はなかなか成功できないという分析があるぐらいです。
日本の女性の場合はこの時期を家庭で過ごすのですが、それ自体がマイナスなのではありません。企業は「どうせ女性は子どもが生まれたら仕事を辞めるのだからチャンスを与えても仕方ない。鍛えても仕方ない。」となり、女性は「良いチャンスを与えてもらえない。勉強するチャンスを与えてもらえない。」となります。これは大学人として大いに反省しなければいけないのですが、日本の企業は「大学で勉強しなくても良い。企業に入ってから職場で鍛えて育てるから」と考えています。ところが企業に入って鍛えて育てる相手は男性のみで、女性はいくら鍛えて育てようと思っても「どうせ子どもが生まれたら辞めるから」と企業は長い間思ってきました。「どうせ辞めるから責任のある仕事は与えない」という悪循環になっているのです。逆にそれは女性から見ると「いくら頑張っても責任のある仕事をさせてもらえるわけではない」ということなのです。
私も記憶がありますが、私は24歳で結婚をして26歳で子どもを産みましたが、20代後半ではまだ仕事の面白さがわからりません。そして自分がこの仕事でちゃんとやっていけるという展望も持てません。その時に子どもを持つと「私は職場では取るに足りない存在で、大した仕事をしていない。子どものお母さんであることの方がよほど心躍る大事な良い仕事だ。思い切りよく仕事を辞めよう」という選択をしがちです。女性たちが「自分は社会で通用する人材になれるかもしれない。この会社の中でやっていけるかもしれない」という手ごたえを持つのは個人差はありますが、30歳前後の仕事をはじめてから10年近くたったころではないでしょうか。ですから、今、職場に入って少し仕事が面白くなってきた人たちが結婚を後回しにしたり子どもを産むのを後回しにするという行動をとっているのはとてもよくわかります。「子どもを持ったら面白さがわかりかけた仕事が続けられないのではないか。」「仕事を持って家庭に入ったら復帰は不可能ではないか。」という不安が女性たちにも見えてきたのです。23〜25歳の頃にはそれがわからないので、「かわいい子どもが生まれたから家庭にいるわ」というように迷わず辞められるのです。ところが世の中のことがわかってくると、どうしようかと考えるようになります。その時に今の日本の職場はそのような女性たちに頑張りなさい。子どもを産んでも仕事を続けることが出来るという背中を押してあげる雰囲気がまだまだ少ないという印象があります。