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No.37 パパトーク・精神科医・大西秀樹さん(55)

No.37 パパトーク・精神科医・大西秀樹さん(55)

がんの患者さんや家族のケアを続ける、埼玉医大国際医療センター・精神腫瘍科教授の大西秀樹さん(55)。ふたりの息子さんを育てた先輩パパです。心に寄り添う精神科医は、どのように子育てをしてきたのでしょうか。夫婦の向き合い方についても聞きました。

 

―外来のお仕事はいかがですか。

「以前から、がんの患者さんや家族のケアをしています。2006年に埼玉医大で、遺族外来を始めました。これまで、300人以上の遺族や家族が受診しています。がんの患者さんも年に300人ぐらい、いらっしゃる。心身のつらさや悩みに耳を傾け、解決策を一緒に考えます。単身赴任をしていて、休日に自宅に帰る生活も10年目になりました」

 

 

―積極的に子育てをしたそうですね。

「息子はふたりとも成人しています。妻もドクターで、自分たちが大学院生のときに長男が生まれました。生後すぐから保育園に預けました。当時の仕事は、私のほうにゆとりがあったので、送り迎えをよくしましたよ。自転車の前と後ろにふたりをのせて。『パパ、頑張って』とペダルをこぐ足を小さな手で押されて、かわいかったです。もともと小児科医になりたかったぐらい。子どもが好きですし、医療にかかわる者として子育てはやらなきゃダメだと思っていました」

「精神科の患者さんが、よくなって社会復帰するとき。日常の生活はできますかと聞くと、『じゃ、大西先生はできているの?』と問われます。『私は、自分でみそもつくるし、家事も好きです』って答えますけど、それと同じです」

 

―帰りが遅いときや、子どもの病気もありますよね。支えてくれる人はいましたか。

「双方の両親が、泊まり込んでくれたり、駆けつけてくれたり。かなり助けられました。

決定的な問題が起きずに息子たちが成人できたのは、運がよかったし、周りのサポートに恵まれたからだと思います。近所にも、気軽に遊びに行ける老夫婦のお宅があった。私も将来は、『うちにおいでよ』と言えるプチ託児所のおじいさんになりたいですね」

 

「家事や子どもの相手をプロにお願いするのは、抵抗がなかったです。サービスを利用するとお金がかかるという人もいますが、考え方しだい。月に何回か利用しても、外食や嗜好(しこう)品ぐらいの出費。保育園から小学校まで頼んでいた家政婦さんが、ものすごくいい人だったんです。子どものためにどうしたらいいか、いつも考えてくれました。息子が中高生のときには、医学生の家庭教師が、いい話し相手になってくれましたよ」

 

 

―共働き夫婦のバランスはどうやって取ればいいでしょうか?

「我が家は、妻のほうが仕事にのめり込むタイプ。子どもたちが小さくても、フルスロットルで働いていました。周囲には認められて、評価されますが…。働くお母さんは、妊娠や出産でキャリアが中断されたとか、ほかの人に遅れをとってしまったとか、あせりますよね。でも、仕事を一生懸命やるのはいいですが、人生は全体のバランスが大事。精神科医として、いま子育て中のパパやママにアドバイスするなら、周りを見るゆとりをちょっとだけ持ってほしいということ。『のりしろ、ゆとり』を残すのがプロなんですよ」

 

「たとえばうつの患者さんが、30代の子の食事を必ずつくってあげている。帰宅した足音を聞かないと安心できないと言うんです。80代で、50代の子の食事を用意し、それが親の責務と思っている患者さんも。頑張りすぎで、バランスを欠いている。体調が悪いときは頑張らないで、寝てしまってもいい。私も100%で仕事しないようにしています。入院が必要な患者さんや急な問題にも対応できるように、のりしろを残しておくんです」

 

―忙しくて、夫婦の気持ちがすれ違ってしまいます。

「パパが何もしてくれないと思うなら、ママと子どもで遊びに行ってしまったらどうですか。ママと子どもだけで楽しそうにしているのを見て、パパは寂しくなるかもしれない。他人を変えることはできないし、説得もできない。説得するのでなく、納得してもらう。私も、妻が仕事で忙しくしていたときに、子どもたちと旅行の計画を立てて、『一緒に行く?どうする?』と声をかけました。そうやって行動してしまうんです」

 

「会話する、話し合うということも、のりしろとして大事です。夫婦の間でも、子どもたちとも。子育てって、新しい人生を歩むということ。新しいことをするのは、勇気がいる。子育てを通して、親が決断できるのか。『決断できないけど、いまの状況はイヤ』と思っているのは、ものすごいストレス。覚悟を決めるのも大事です」

 

 

―これから、子育てしたい人たちへメッセージを。

「結婚するときは、うれしくて先のことまで考えないかもしれません。子育てをしたら、どうなるだろう。苦しくなるかもしれないと予想してみてください。たくさんの死と向き合ってきた私は、恋愛や結婚の最終地点は、どちらかの『死』だと思います。死を考えない人が多いですが、いつかはみんな死ぬのです。身近な人が亡くなったポイントで、自分たちがお互いの死にどう向き合うか、話をしてみてはどうでしょうか」

「生きていくのは、いいことばかりではありません。夫婦の道のりも楽しいだけではない。子育てや病気など、苦しい時期もある。逃げないで乗り越えてこそ、家族です」

 

★お会いして★

お仕事でお世話になって10年近くたちます。バスケットボール選手だったそうで、すらりと長身。ぎらぎらせず、いつも穏やかです。単身赴任のいまも、楽しくお料理しているそう。このフライパンがいいとか、かまどだきのご飯がおいしいとか、まめ情報も参考になりました。もちろん、精神科医として先輩パパとしてのアドバイスも、実践したいです。

 

(なかの・かおり 39歳で初産。会社員生活は、20年目になりました)