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No.35 グローバル子育て・パキスタン編
No.35 グローバル子育て・パキスタン編

No.35 グローバル子育て・パキスタン編

ご縁があって出会った、パキスタン大使館の経済公使・タラット・イムティアズさん(58)。経済学のドクターであり、ふたりを育てたワーキングマザーです。タラットさんと、休暇で来日中の娘さん(28)、3歳の娘と私。週末の昼下がりに4人で女子会をしようとお誘いが。仕事や子育てのお話を聞きました。

 

タラットさんは、パキスタン北部の都市・ラホールで育ちました。パンジャブ大学を卒業し、政府の仕事をするように。1982年に結婚。だんなさんは7歳年上だそうです。娘さんを出産し、3カ月の産休をとりました。初めは義母が手伝ってくれましたが、うまくいかず、上司に特別な休暇をとることを交渉。さらに約1年の休暇をとりました。

 

「娘と一緒にいられなかったらハッピーじゃないと言うと、ボスがほほえんでくれたの」。産休は法的に定められていますが、特別な休暇は無給だったそうです。復職すると、ナニーの助けも得て、2歳ぐらいで娘さんはデイスクールに行き始めました。

 

息子さん(26)を出産したときは、産休と6カ月の特別な休暇を取りました。仕事は9時から2時で、土曜日もあったので週に6日。そのときはオフィスと自宅がとても近く、ナニーに息子をまかせて、いつでも行き来できたそうです。家事はお手伝いさんにお願い。きょうだいの年齢も近いし、ハードな毎日でしたね、とたずねると、「そんなことないわよ!」と言われました。

 

勤めてから18年、イギリスの大学で研究する機会がありました。ふたりの子たちを連れて3年半、滞在したそうです。経済学の博士号を取りました。日本へは3年前から単身で来ていますが、家族がよく訪ねてきます。娘さんはパキスタンで高校の先生をしています。生徒は男女ともいて、英語や経済を教えている。息子さんはドバイで働き、結婚してまもないそうです。

 

タラットさんによると、パキスタンでもワーキングマザーはまだ少ないとか。女性の労働者のうちワーキングマザーは約30%。それでも、女性の活躍の場はあると言います。「日本では、男性のためのワーキングスタイル。女性は主に下のポジションにいるように思う。パキスタンでは、すべての分野で女性に門戸が開かれ、男性と競争できる。だから、女性もトップの地位にいます」

 

日本のママたちへもメッセージをもらいました。「ワーキングマザーは、自分の生活や生涯のプランをオーガナイズできたら、よい母、よい妻になれる。でも、子どもたちが小さいときには、仕事を休むことが許されるべきです。そうあってこそ、健全な人生の基礎をしっかり築けると思うの」

 

私の生活を気にかけてくれて、「手伝ってくれる人はいるの?」と心配していました。夜まで会社にいて、保育園にかけ込むというと、「大変ね。わかるわ」とうなずくタラットさん。「日本でもそうかもしれないけど、家事や育児に熱心な男性は限られているのが現実」と本音を話してくれました。

 

パキスタンの人たちは貧富の差が大きく、タラットさんはかなりのエリートと言えると思います。そういう前提はあるとしても、「イスラム教は制限がある」とのイメージがありますが、おしゃれや食事を楽しんでいる様子。タラットさんには「私はそんなにこだわっていないわよ。娘はノースリーブだって着るし」と言っています。

 

肌を露出しない長袖とパンツに、頭にはスカーフの女性が多いものの、色やデザインで楽しみます。タラットさんは黒が好きということで、花柄を取り入れたファッション(提供の写真は、現在のタラットさんと、子育て中のひとこまです)。

 

食べ物については、「豚肉以外なら、食べるわよ」。お店では「ノーポーク?」とひとつひとつ確認して、サラダやお魚を注文。アルコールもNGなので、グレープフルーツジュースです。前の日に行ったおすしやさんでは、ガリが気に入ったそう。「あのジンジャーはどこで売っているの?」と聞かれ、ガリについて語り合いました。

 

娘のおもしろい顔を撮って見せてくれたり、「何したいって言っているの?」「トイレに行ってハッピーだった?」と気にかけてくれたり。やさしいママでもあるのです。

 

女子トークは止まりません。タラットさんが「シンデレラの映画は見た?」。娘と見に行ったと答えると、「英語で?日本語で?私たちも見に行ったのよ」と盛り上がります。「きれいな映画だった」と4人で一致。共通点があると、親しみを感じますね。血液型の話も出て、何型か教えてもらいました。そんなことも気にするんだとびっくり。

 

こういう何でもないやりとりこそ、生きた情報だと思います。ノーポークでも大丈夫そうなお店を探し回り、眠くて大騒ぎの娘をなだめながらのお話。英語がエクセレントでなくても、気持ちで通じ合えて、貴重な女子会でした。

 

(なかの・かおり 39歳で初産。会社員生活は、20年目になりました)