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No.9 孤育て

元TBSアナウンサーの雨宮塔子さんは同じくアラフォーのママ。先日、離婚に関する報道を目にしました。コメントは「彼は家族のためにも一生懸命働いてくれているのですが、パリでの子育てに孤軍奮闘している私は、彼と共有できるものがまったくない寂しさにたえきれなかった」という内容。私は「孤軍奮闘」という言葉に共感してしまいました。

 

「孤育て」という言葉があるそうですが、子育てに孤独を感じるママは少なくないのではないでしょうか。仲間や家族もいるはずなのに、生活に困っているわけでもないのに、孤独。何人かのママからも「夫がいるのに、ひとりぼっちで子育てしているみたい」「ふたりの子に恵まれたけど、子育てが楽しい!って言えない」と聞きました。

 

私も、孤育てを実感するできごとがありました。先月、2歳の娘が40度まで上がる夏かぜの一種にかかりました。発熱がわかった深夜にネットでクリニックと病児保育を予約。朝、会社と保育園に連絡を入れて娘をクリニックに連れて行き、病児保育のシッターさんにお願いし、遅れて出社しました。

 

すると病児保育のオフィスから電話があり、「熱が上がった」とのこと。夕方になってからは「40度になってしまったので、早く帰って下さい」。連絡があってすぐ帰れればいいのですが、仕事で担当がついているので、もどかしかったです。1時間ぐらいして、周囲にお願いしてなんとかかけつけました。

 

病気の子を預けて、仕事なんて…と思うかたもいるでしょう。育休から復帰するまでは、「子どもの病気は仕方ない。休んだり早退したりしても、許してもらえるのでは。そういうママは多いのだから」と思っていました。ところが復帰後。娘の病気に加え、私もうつって体調不良が続き、休んでいたら、上司に繰り返し注意されました。職場のママたちに聞くと、自分の親や義理の親に駆けつけてもらうか、夫が融通をきかせている。身内に頼めない人は病児保育を利用していて、会社を休むママがいなかったのです。

 

仕事を休めないという事情のほかに、心理的な面もあります。初めてママは子どもが高熱を出したらどうしていいかわからない。病児保育を頼めず、自分ひとりで看病しなければならないとしたら、それも恐怖。私は、朝に受診したクリニックの看護師さんに、夕方も「熱が下がらなかったらどうしたらいいですか」と聞きました。水分がとれなかったら救急だけど、解熱剤を使って明日の受診まで耐えて…と言われ、その言葉を支えにしました。

 

心の中に「孤育て」という言葉がどーんと浮かんできました。夫は泊まりの出張に行っていました。帰りも遅く、その後も残業続き。うつったのか看病疲れか、私も週末に熱を出しましたが、夫は持ち帰り仕事が忙しいと言います。我が家は娘が1歳過ぎまで夫が海外に単身赴任していました。育休中はひとりで育てたのですが、ママが仕事をしながら、しかも病気をしてしまうと大変さがまた違うんです。

 

ママは子育てのためお給料が減っているし、「夫が稼いでくれるのだから」という見方もありますが、収入で単純に家事や育児を割り振れるものではありません。でも実際は、子どもが病気になると有給休暇や看護休暇を使い切り、看病で寝不足になるのはママ。シッターの手配や変更で神経をつかい、理解のない相手に傷つくのもママ。働いて子どもに愛情を注ぎ、家のことの細かいフォローもして、あちこち頭を下げて、というスーパーマザーになるしかないのでしょうか? 仕事を最優先するパパが多いのは、個人の価値観もありますが、「ママである女性が子どものこと、家のことは背負ってあたりまえ」という雰囲気が、まだまだ職場にもあるからだと思います。

 

娘を抱っこしながら、安心してママのフォローを頼める人はだれもいないという事実に、涙が出ました。

 

「共働きなんだし、お金で解決できるよね」という人もいます。もちろん、助成もあって頼めるシッターさんなどは、他人なのに娘に優しく接してくれて本当にありがたいです。だけど、やはり子育てはお金では解決しきれない。時間やお金で区切れない、安心や愛情が必要なのです。そうなると身内が一番ということになりますが、高年齢出産だと祖父母も高齢。病気のたびにかけつけて孫の世話をしたり食事を作ったりというのは、心身が健康で余裕があるとか、近くに住んでいるとかでないとむずかしいのが現実です。

 

昔なら、近所の人や親類が助けてくれるということがあったはず。マンションや保育園で一緒のママさんたちとは、困ったときに助け合う関係ではありません。いっときは、年上ママの「おせっかい」として、子どもを遊ばせながらおしゃべりする会を企画したのですが、なかなか集まらない…。身内で完結していて交流を求めていないか、ママがしっかりしているのでしょう。パパが単身赴任中で仕事しながら姉妹を育てているママに聞くと、特に困っていないみたいです。ママの性格にもよるし、職場にものすごく理解があるか自分の裁量で加減できるなら、孤独感もそれほどつのらないかもしれません。

 

せつない話を続けてしまいましたが、孤独な気持ちをやわらげるために工夫していること。メールやSNSなどは、あなどれません。みんな子育てや仕事に忙しくても、遠くにいても、子どもが寝ついたちょっとした時間にやりとりするとスッとします。「熱が出ちゃった」「大変だね」だけで心強い。返事がないと寂しいので、期待しすぎずに。あとは近所で顔見知りのママに会ったら、負担にならないノリで短い時間でも会話する。「うちも同じ!」「いやなことに目を向けちゃダメ」など話がはずみ、ちょっと楽になりますよ。

 

最近は、ファミリーサポートさんに時々、娘を預かってもらいます。共働きで、パパとママが助け合って分担している家庭。小学生の娘さんとパパが娘のお迎えに行き、自宅で妹みたいにかわいがってくれます。ママに「出張が多くて、あまり預かれなくてごめんなさい」と言われたのですが「月に1回でもおつきあいいただけたらうれしいです。昔は自然な近所づきあいがあったのでしょうが、いまはこういう形になりますよね」と伝えました。家庭の状況は変わっていくので、こうした関係も一期一会。大事にしたいです。

 

(なかの・かおり 39歳で出産。約20年、メディアの仕事にかかわっています)