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No.1 子育ては「闘い」?

No.1 子育ては「闘い」?

はじめまして。私は39歳のときに初めて出産し、娘は2歳です。
入社して約20年、メディアの仕事にかかわり、この数年は内勤の職種です。1歳になってすぐの昨春に育休から復帰し、週4日の勤務にしていました。
 
ごあいさつがわりに…子育て中のみなさんには「あたりまえ」なことかもしれませんが、2歳児のいる生活をご紹介します。このコラムを完成させているとき、娘が夏かぜの一種にかかりました。午前中、会社にいると保育園から呼び出しの電話が。お熱だったのですが、保育園から着信があると、いつもドキドキです。そこからママはフル回転。
 
まず上司に半日看護休のお願い。救急外来、近所のクリニック、保育園と電話をかけまくり、その日は夜に娘とファミリーサポートさんのお宅訪問もあったので延期の相談。お迎えに行って抱っこで連れて帰り、ゼリーやジュースなど口当たりのいいものを買い込みました。娘は体調のせいで不快なのでしょうか、居間でおもちゃバスケットをひっくり返し、洗面所でいたずら。ママは片付けながら翌日の病児保育のシッターさんを予約し、クリニックと薬局に連れて行き、それでも具合が悪く夜間小児科に行きました。
 
夜に熱が上がったので、体をふいて着替えさせ、座薬を入れると眠りました。しばらくすると苦しそうにママの体にのってきます。枕元に用意していた麦茶を飲ませたり、体温を測ったり。ママも神経を張りつめて、ほとんど眠れません。朝、娘に何か食べさせようと並べても「いらない」。抱っこしていたら、うとうとし始めたので、シッターさんが来るまで夫に任せて出勤しようとすると、大泣きして追いかけてきます。「ママがいいー」「ママと、かいしゃいくー」とサンダルをはき始めました。
 
そうだよね、ママがいいよね。具合が悪いんだもの。甘えたいよね。だけどママ、会社に行かないと出勤日数が足りなくなるの。本当に、熱があって大泣きしている2歳の娘をおいて行かなきゃいけないのかな。何のために?
 
1歳のころはもっと病気が多くて、いつもこう考えていたけれど、日々を生きるのに精いっぱいなので答えは先送り。小さい子の病気って、日数がかかるんですよね。今回も夏かぜに続いて別の病気になり、娘が好きな海に行く予定をキャンセルして土日も病院をハシゴ、連日の看病にママはよれよれで再び出勤。保育園でいろいろな病気をもらって免疫をつけるのですが、娘と密着しているママにもうつります。母娘で手足口病や胃腸炎になり、救急外来に駆け込んだことも。看護休暇や有給休暇の残りを数えるのが習慣になりました。
 
平和なときの日常はこんな感じです。朝、食のすすまない娘のご機嫌をとってごはん。保育園の着替えを用意し、夏なら水遊び用のブルマやシャツ、タオルもいるし、熱を測って連絡カードを書き、「じぶん!」と言ってやりたがるので着替えを見守ります。ママはお化粧代わりに日焼け止めを塗って、洗えるワンピースにレギンスパンツという地味さですが、「ママのおようふく、これー」と指定されることも(笑)。何とか送り届けて、決まった時間に出社。夜は仕事の緊張が残ったまま迎えに行き、寄り道につきあったり途中で抱っこになったり、なだめながら連れて帰り、ごはんを食べてお風呂。ママはごはんをかき込み、お風呂の前後なんてだれにも見せられない姿で娘を追いかけます。
 
ベッドに行ってもすぐには眠れません。「ごほん、おむー」というので何冊か読み、最近はなぜかサザエさんを歌いながら「ママおどってー」と求められ…さらに歌ってお話して、やっと夢の中。夜中に「だっこー」「ママー」とくっついてくるため、授乳を卒業しても朝までぐっすり眠れるわけではないんですね。ほかにも、説得しながら爪切り(肌を傷つけないように)や前髪カット(目やになどの原因になるので)、歯科や予防接種の予約、おむつやすぐ小さくなる洋服の買い足しと名前付け、娘向けの小さいハンバーグやスープを作り置きするなど、用事は限りなくあります。
 
休日も、家の中では飽きてしまう娘を連れ出して幼児教室に行ったり、自分の時間もほしい夫に頼み込んで遊んでもらったり。きょうだいや双子ちゃんのママもいるし、もっとがんばっているおうちもありますが、仕事ばっかりしてきたアラフォー初めてママには重労働…。「だれかに任せてママは完全にお休み」という日は、産後から1日もありません。でもかわいいので、愛情が深ければ深いほど、ママは心身を削ってしまうのです。サポートしてくれる身内がいればいいけれど、自分が高年齢出産なら祖父母も高齢。遠方で体も弱いとなると、手助けはあきらめざるを得ません。
 
夫は夜勤で午前3時すぎに帰宅の職種だったこともあるし、深夜まで仕事の会合や休日出勤があります。私は信頼できるシッターさんやファミリーサポートさんを探し続けていて…探すだけで時間と費用がかかっていますが、仕事中心の夫と自分だけの子育ては心細く、近所のおばちゃんおじちゃん代わりの人が何人かいたらいいなと願っています。
 
子育てって、闘い。そう感じる親は、私だけでないと思います。だけど、「子育てと仕事の両立が大変で」なんてぐちると、「子どもに恵まれて、仕事もあるのに、ぜいたく」という意見もありますよね。働く女性にとって、子育てをする以前に、結婚して、妊娠してというところから、闘いのようになってしまうのです。私も、そうでした。仕事は不規則で転勤・異動が多く、初めての部署でゼロからスタートの繰り返し。目標とする仕事のため、もうひとふんばりすると35歳を過ぎ…。夫も転勤が多く、結婚して同居できたのは37歳のとき。なぜか、すぐに赤ちゃんができると思いこんでいましたが、実際は高年齢になると妊娠率は下がるし、流産は増えます。私も流産を経験し、やっと妊娠しました。(その後、夫が海外に単身赴任してしまい、産前産後を娘とふたりで過ごすことになったのですが…)
 
こつこつと仕事をしてお店を持ったり、専門職として活躍したりしている友人からも、「やりがいはあるけれど、気づくとアラフォーになって、結婚したくて…」という話を聞きます。離婚歴のある友人が、お見合いに励んだという話も聞きました。結婚する相手がいたとしても、余裕のない職場にいれば、妊娠するのも気をつかいます。だって妊婦やママが増えたら、仕事が回らないと思う人もいる。本当なら同僚の妊娠を喜びたいけど、けんせいしあうような雰囲気になることも。自分が高年齢だったらもっと切実。赤ちゃんは授かりものだけれど、タイミングをはかったり、不妊治療に通ったりする人も増えました。妊娠しても流産しやすい初期には言えないので、安定期に入って発表するまで何かあったらどうしようとはらはらし、早く公表して理解を得たいとドキドキします。
 
ふたり目のタイミングもそう。産休・育休を取ったり、子どもが病気をしてしょっちゅう会社を休んだり、ひとりでも大変。ふたり目がほしい、できた、と言ったら「えーっ?」という反応をする同僚もいるかもしれません。私も独身のころは、仕事で成果を出すのが一番という価値観でした。でも気持ちは複雑で、子育て中の同僚のかわりに夜勤や休日出勤をしたときは、「仕事も家庭もある人はいいなあ」「こうやって自分の仕事が増えると、結婚したくてもできない」と思ったことが…。単純に「子育て中の人をみんなで支えよう!」とは言えない立場もあります。
 
こういう現実を見るたびに、「少子化になるよね」と実感します。自然に結婚して、授かって、産んで、仕事を続けられるサポートに恵まれてという人は「少数派」。子どもがいる人も、いない人も、それぞれの立場の人がゆとりをなくしてしまっています。「家庭がある人はうらやましい」「子どもの世話は大変なんだから」「仕事があっていいね」。なんとなく、顔色をうかがいあうような空気があるのではないでしょうか。
 
本当ならどれがいい、悪いということはなく、「子どもがほしい、なかなかできない」「子育て中」「ひとりが好き」「子どもとの時間を大事にしたくて会社をやめた」などいろいろな生き方があります。どんな生き方でも尊重しあえれば、もうちょっとずつゆとりが生まれると思います。全体の空気がゆるめば、子どもを産んで育てるという流れも、いまよりはつかみやすくなるのかなと期待してしまうのです。
 
違う生き方を、簡単には理解できなくても、子育てってどんな大変さや楽しさがあるのか、少し知ってもらうことで変わるかもしれません。子育てを経験した人でも、小さいころのことは忘れてしまうというし、年齢に応じて悩みも違ってきます。だから、いま2歳の娘を抱えて働き、泣いたり笑ったりしている私の体験や、奮闘するママたちの姿を記したいと思いました。
 
このたび、ご縁があってコラムを書かせていただくことになりました。高年齢での妊娠や出産、働きながらの子育てについて、「ときどき」つづります。親子でお出かけ、おけいこ体験など、楽しみだけど心配なあれこれもご紹介します。少しでも役に立つ情報や、「そうなの?」「そうだよね!」というポイントがあったらうれしいです。
 
(なかの・かおり)